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一人旅ものろーぐ

2023年4月22日

春休みが迫っていたある日、大学生の美咲は何か新しいことに挑戦したいと思っていた。
友人たちはみんな旅行に行く計画をしていたが、美咲はなかなか決断できずにいた。
そんな中、美咲はふとした衝動から一人旅に出ることを決めた。

一人旅に出るなんて、美咲にとっては初めてのことで、自分で旅の計画を立てることも初めてだ。
どこに行こうかと悩んでいたところ、美咲は以前から行ってみたかった伊豆高原を思い出した。
自然が豊かで、海も山も楽しめるという伊豆高原は、美咲が求める新しい体験を得られる場所だと感じていた。

「そうだ、伊豆高原に行ってみよう!」

決心をした美咲は早速、伊豆高原への旅行の計画を立て始めた。
何をどう準備すればよいか分からないこともあったが、自分で計画を立てることでより一層、旅行に対する期待感が高まっていく。
ネットサイトや旅行ガイドブックなどを調べて、美咲はさまざまな宿泊施設を見つけた。
だけどホテルや旅館、民宿、ペンションなど、さまざまなタイプの宿泊施設があり、どこに泊まろうか迷っていた。

ある日、美咲は大学の友人・真理子とカフェで待ち合わせた。
美咲は春休みに一人旅に出る予定だったので、真理子にその話をしてみた。

「ねえ、真理子。春休みに私一人で旅行に出かけることにしたの。どこに行くか決めたんだけど、それを聞いてもらえる?」

興奮気味に言った。

「へえ、一人旅なんて勇気あるわね。どこに行くの?」

真理子は興味津々の様子で返した。

「伊豆高原に行くつもり。

温泉に入ったり、景色を見たり、ゆっくりしたいの」

「それって、まさに一人旅にぴったりの場所ね。でも、一人で行くって不安じゃないの?」

心配そうに尋ねた。

「最初は少し不安だけど、自分で行きたいと思った場所に行って、自分で行動することが大切だと思うの。

でも、ひとつだけ悩んでいることがあるんだ。ペンションに泊まるか、ホテルに泊まるかで迷っているの」

美咲は話した。

「そうね、どっちがいいかは、自分の旅のスタイルによると思うわ。私なら、ペンションに泊まるかな。オーナーが作る美味しい料理とか、他の宿泊客と交流することができるから。でも、ゆっくりと過ごしたいのなら、ホテルもいいかもしれないわね」

真理子はアドバイスした。

「うん、そうだね。私もペンションに泊まることにしようかな。楽しみだな」

美咲は嬉しそうに話した。
真理子との会話で、更なる旅行の楽しみを見つけた。
そして、ペンションに泊まることを決めて、一人旅に向けて準備を進めていくのだった。

一人旅を計画するうちに、偶然見つけた小さなペンションに惹かれた。

「これだ!ここにしよう!」

心からそう思っていた。
オーナー夫婦の料理が自慢のペンションで、部屋からは庭園が見えるというすばらしいペンションだ。
早速、そのペンションに予約を入れてみた。
すると、すぐにオーナー夫婦から返信があった。

「いらっしゃいませ、ご予約ありがとうございます。お待ちしております。」

返信を読んで、少し緊張してきた。
初めての一人旅で、不安がある。
でも、その一方で、わくわくと期待でいっぱいになってきているのがわかる。
旅の準備を進めながら、今から出発が待ち遠しくてたまらないのだ。

一人旅のため、必要な荷物だけを持っていくように気を付けている。
旅行先で手配できるものは手配しておくことにし、あくまでも必要最低限の荷物だけを持っていくことにしよう。

そして旅行の前日に荷造りを始めた。
まずは、荷物を入れるバッグを選び、大きさや機能性などを考慮して、最適なものを選ぶようにした。
その後、必要な衣類やアイテムをリストアップし、一つひとつバッグに詰めていった。

「よし、これで完璧!」

自分に言い聞かせ、旅行前日の夜更かしを終えたのだった。

翌朝目覚まし時計が鳴り、ぱっと目が覚めた。
今日は待ちに待った旅行の日。

初めての一人旅。
ドキドキしながら、ベッドから身を起こし、窓のカーテンを開ける。
外はまだ薄暗いけれど、街の喧騒が聞こえてくる。
この街も、今日から一時的にバイバイ。

昨夜のうちに洋服を選び、鞄に荷物を詰め込んである。
持ち物は、リストを作って事前に用意している。
チケットや予約の確認も済ませている。

さぁ部屋の鍵をカバンにしまい込み、ドアを開けて出かけると、友人からの電話やメッセージが届いていることを思い出した。
真理子からのメッセージだった。

「初めての一人旅、楽しんできてね!」

私は嬉しさで胸がいっぱいになった。
一人暮らしをしていると、友人との会話もメールやSNSで済ませてしまうことが多い。
でもこのメッセージは些細なことだけど何だか特別なものに感じられ。
部屋を出発し駅に向かう途中、興奮で胸が高鳴ってくる。

どんな素敵な出会いが待っているのだろう。
どんな美味しいものが食べられるのだろう。

そんな期待とワクワクで、足取りも軽くなっているようだった。

美咲は東京駅に到着した。
大きな駅の中を歩き回り、乗り換え案内を見ながら目的地の電車に乗るためのホームを探す。
駅の中は混雑していて、人々が荷物を持ち運んだり、急いで歩いたりしている。

旅行を楽しむためには、まずは気持ちを落ち着かせる必要があると思い、混雑した駅の中でも意識して余裕を持って歩くようにしてみた。

目的地までの電車が発車まであと二十分ほどあることを確認し、時間をつぶすために駅構内を散策することにした。
駅ビルには多くのショップやレストランがあるけれど、今回は買い物や食事はしないで、ただ時間をつぶすために駅内を散策をした。
駅の中を歩き回り、売店で飲み物を買って軽く一息つく。
時間を確認すると、もうすぐ電車が出発する時間。
美咲はホームに向かい、電車に乗り込んでようやく旅行の始まりを実感するのだった。

一人で空いている席に座った。
車内は落ち着いた雰囲気で、非常に心地よい気分に浸っている。

「こんにちは!お隣は空いていますか?」

若い女性が美咲の前に立ち、声をかけてきた。

「はい、空いてますよ。どうぞ座ってください」

美咲は快く返答した。
隣に座ったのはおしゃれな服装をした女性だった。
女性はニコニコしながら美咲を見ている。

「こんにちは。ご旅行ですか?」

女性から声をかけてきた。
美咲は緊張していたけれど、女性の優しい雰囲気に安心して答えた。

「はい、初めての一人旅です」

するとその女性は

「私も昔はよく一人旅をしていましたよ。一人で旅行すると、自分と向き合う時間が持てるし、新しい発見もあって楽しいですよね」

と話し始めた。
女性の話に興味津々で、自分もそういう経験をしたいと思っていた。
女性はアドバイスをくれて、美咲はその後も二人で話を楽しみながら、熱海駅に到着するまでの時間を過ごした。

熱海駅に到着した美咲は、隣に座っていた女性とお互いにありがとうと言い合い、別れを告げた。
女性は笑顔で手を振り、美咲も手を振り返した。

美咲は次の電車のホームに向かう。
目的地である伊豆高原までは、ここから伊豆急行線で向かうことになっている。
ホームに着くと、すでに列車が待っていた。
列車に乗り込み、車窓から外の景色を眺めながら、旅の始まりを感じていた。

伊豆急行の電車内で、美咲は美しい海が見える窓際の席に座った。
すると、隣に座っているおじいさんが話しかけてきた。

「伊豆高原にお出かけですか?」

優しく微笑みながら、

「はい、初めての伊豆高原に来ました。風景が楽しみです」

と答えた。

「私もよく伊豆高原に行きますよ。温泉がとても良くて、風景も最高ですよね。」

おじいさんの話を聞きながら、彼の人生経験や旅行の話を聞いていた。
おじいさんは、旅行先での出来事や、子どもたちとの思い出話などを語ってくれた。

会話を通して、知らなかった場所や、新しい旅行のアイデアを得ることができた。
電車の中での出会いが、美咲の伊豆高原旅行に彩りを与えてくれた。

美咲は伊豆高原駅に到着し、駅を出ると、美しい自然に囲まれた静かな街並みが広がっていた。
彼女は周りを見回しながら、宿までの道順を確認した。
ペンションまで向かう道中には、美しい自然に囲まれた道が続いている。
その道中で、山々や海を眺めたり、鳥のさえずりを聞いたりしながら、心地よい風を感じながら歩いていく。
途中、小さな川を渡る橋があった。
その橋を渡りながら、澄んだ水や美しい景色に感動した。
また、橋の上で出会った地元のおばあさんとの出会いもあった。
おばあさんは美咲に優しく話しかけてくれる。

「今日は良い天気ね」

そういった言葉に励まされ、ペンションまでの道のりを歩き続けるのだった。

美咲は荷物を持ちながら、ペンションの前に立つ。
目の前には白を基調とした二階建ての建物があり、レトロで可愛らしい雰囲気を醸し出している。
周りには木々が茂り、静かな山間の風景が広がっている。

美咲は思わずため息をついた。
この静かで穏やかな空気が、都会の喧騒とは全く違う世界にいることを実感させてくれる。
そして、そんな風景と共に、ペンションには何か魅力的なものがあるような気がしてくるのだ。

ペンションに入ると、オーナー夫婦が温かく出迎えてくれた。
オーナー夫婦は、年配のカップルで、どちらも優しそうな笑顔が印象的だった。

「ようこそ、お越しくださいました。お疲れではないですか?」

オーナー夫婦が声をかけてくれた。
優しい雰囲気に包まれながら、

「はい、少し疲れましたが、とても素敵な場所ですね。」

と答える。
オーナー夫婦は、美咲を案内しながら、

「ありがとうございます。当ペンションは、自然に囲まれた静かな場所にあり、ゆっくりとお過ごしいただけます。」

オーナー夫婦が丁寧に部屋の案内をしてくれた。

美咲は部屋に入って驚いた。
洋風のかわいい部屋で、ベッドは大きな窓の近くにあり、外の景色がとても美しいことに気がついた。
また、部屋にはテーブルやソファもあり、落ち着いた雰囲気が漂っている。
この部屋での滞在を楽しむことを心から楽しむことにした。

オーナー夫婦は、部屋の中を見回しながら、

「ご不明な点がありましたら、遠慮なくお尋ねくださいね」

と優しく声をかけてくれた。

「今晩の夕食は、十九時からダイニングでお召し上がりいただけます。

どうぞごゆっくりお過ごしください」
と言って、部屋を出ていった。
部屋の窓からは、緑豊かな山々が見え、心地よい風が入ってくる。
この静かで穏やかな雰囲気に心が落ち着いた気がしていた。

美咲は荷物を置いて、ベッドに座ってリラックスしていた。
部屋の中は静かで落ち着いて、窓の外には緑豊かな山々が広がっている。
深呼吸をして、新鮮な空気をたっぷりと吸い込んでみた。
部屋で荷物を広げながら、部屋の雰囲気にうっとりとしている。
清潔で可愛らしい内装に心が癒されるようだった。

窓から外を眺めた美咲は、青々とした木々や遠くに見える山々に思わずため息をついた。
都会の喧騒から離れ、自然に囲まれた静かな時間を過ごすことができることに感謝しながら、深呼吸を繰り返して静けさを味わっていた。

「ここは本当に静かでいいわね」

自然に囲まれたペンションは、都会の喧騒から解放された心地よい空間だ。

夕食まで少し時間があるので、美咲は本を読み始めた。
気になっていた小説を手に取り、ゆっくりとページをめくっていく。
時折、美咲は物語の中に没頭し、感情移入しているようだった。

時計を見ると、もうすぐ夕食の時間になることに気づく。
美咲は部屋を出て、ダイニングへと向かった。

ダイニングに入ると、暖かくて居心地の良い空間にほっとする。
少し疲れていたので、そっとため息をつきながら、周りを見渡す。
ダイニングには、木の温かみを感じる家具が置かれ、壁には可愛らしい絵画が飾られていた。
テーブルには、手作りの花瓶に生けられたお花が飾られ、さりげないおもてなしが感じられた。
美咲は、こういった温かみのある空間が大好きで、気持ちが和らいでいくような感覚に包まれていく。
そして、今回の旅行が自分にとってどれだけ大切なものなのか、改めて感じるのだった。

テーブルには赤ワインが用意されていて、料理が運ばれてくるのを待っていた。

「本日の前菜は、地元の野菜と共に、自家製のオリーブオイルとバルサミコ酢のソースでお召し上がりいただくサラダです。」

オーナーの奥様が前菜のサラダを運んできた。
美咲はフォークでサラダを口に運び、地元野菜の美味しさに驚いた。

「おいしいですね。地元の野菜は本当に美味しいですね」

「ありがとうございます。 次はスープと魚料理です。本日は伊勢海老とアワビの煮込み、そして駿河湾の新鮮な魚介を使ったスープです」

奥様が料理を説明してくれた。
美咲は豪華な料理に目を輝かせながら、夕食を楽しんでいた。
美味しい食事のあと、デザートとコーヒーが出された。

「デザートは、チョコレートケーキとヨーグルトアイス、どちらがお好みですか?」

奥様が尋ねた。

「私はチョコレートケーキが好きです」

美咲が答えると

「私も同じくチョコレートケーキの方が好きなんです」

奥様が笑顔で言った。
美咲はチョコレートケーキとコーヒーを注文し、ゆっくりと味わっていた。
オーナー夫婦は美咲が一人旅で初めて伊豆高原に来たことを知って、興味を持ったようだ。

「初めての伊豆高原、どうですか?」

「とても素晴らしいと思います。自然が豊かで、空気も美味しいですね。」

「そうでしょう?私たちも毎日この自然の中で過ごしているので、とてもリラックスできますよ。」

奥様の話し方が優しく、美咲もリラックスして話をすることができた。

「実は、一人旅で来たので、ちょっと不安もありましたが、ここに来たら安心しました。」

「そう言っていただけると嬉しいです。私たちはいつでもお客様のお話を聞いて、お手伝いできることがあればお手伝いしたいと思っています。」

「ありがとうございます。本当に優しい方たちに出会えて、良かったです。」

奥様の言葉に安心感を覚えた美咲は、心地よい時間を過ごすことができたのだった。

お腹いっぱいになった美咲は、このペンションの自慢の露天風呂に行くことにした。
温泉に行くためには、ペンションの建物から少し離れた場所にある別棟に移動する必要がある。
美咲は奥様から渡されたタオルとバスローブを着用し、別棟に向かった。
別棟に着くと、大きな露天風呂が目の前に広がっていた。
木々に囲まれ、清流が流れる中にある露天風呂は、自然に溶け込んだ落ち着いた雰囲気が漂っている。

「ああ、これが伊豆高原の温泉か。本当に素晴らしい景色だわ。これで二十四時間入り放題って、まるで夢のようだわ。」

美咲は露天風呂に入るために脱衣所に入り、靴や衣服、バッグを置いた。
落ち着いた雰囲気の中、自分の周りを見渡すと、木製のロッカーやベンチ、鏡、ドライヤーなどがあり、設備が整っていることに安心感を覚えた。
美咲は服を脱ぎ、ロッカーにしまった。
鏡を見て髪を整えると、タオルを体に巻き脱衣所を出た。
温泉の湯気が立ち込め、癒しの空気に包まれながら、露天風呂に向かった。

露天風呂には誰も入っていなかったので、貸切風呂のようにのんびりと湯に浸かることができた。
森の中にある露天風呂は、自然と一体化していて、周囲を木々や山々に囲まれた絶景が広がっている。
その風景を堪能しながら、湯船にゆっくりと身を沈める。
源泉かけ流しのお湯は、やわらかくて温かく、心地よい疲れをとってくれる。
しばらく時間を過ごしていたが、誰も入ってくる気配もなく時間が止まったように感じられた。

そんな中、美咲と同年代と思われる女性が一人で入ってきた。
美咲は初めての一人旅で、人見知りな性格だったので、少し緊張していたが、彼女は穏やかな表情で微笑みかけてくれた。

「こんにちは、初めまして。私、さちっていいます。」

彼女は明るく挨拶してくれた。
美咲も少し緊張していたが、彼女の穏やかな雰囲気に心が和らぎ、自然と笑顔がこぼれた。

「あ、こんにちは。私、美咲です。」

美咲も自己紹介をした後、少しの間、無言で湯につかりながら、周りの景色を眺めていた。
すると、さちが美咲に話しかけてくれた。

「初めて伊豆高原に来たんですか?」

「ええ、はい。」

「私は何度か来ているけど、初めて来たのは、ちょうどこのペンションでした。それから、毎年来るようになったんです。この露天風呂は、私にとっては特別な場所なんですよ。」

さちは、優しく微笑んでいた。

「そうなんですか。私も、この温泉には惹かれるものがあって、来てみたんです。」

美咲も、自分が初めての一人旅であることや、初めての温泉旅行であることをさちに話した。
そんな二人は、自然と話が弾み、美咲は初めての旅行をしているという不安や緊張も解消されていった。

美咲とさちはお互いのことを少しずつ話し合いながら、温泉を楽しんでいた。
美咲が学生だと話したところ、さちは驚いた様子を見せた。

「学生さんなんだね。私も少し前までは学生だったんだよ。」

「そうなんですか?さちさんはもう働いているんですね。」

「美容師なんだ。でも、学校に行っていた頃が懐かしいな。」

さちは少し寂しげな表情を浮かべた。

「寂しくないですか?」

美咲が尋ねると、さちは頷く。

「時々寂しいときはあるよ。でも、お客さんとおしゃべりすると元気が出るからね。」

さちはそう言って笑っていた。

「そうですよね。お客さんとおしゃべりするのって楽しいですよね。私もアルバイトで接客をすることがあるんですけど、おしゃべりが一番楽しいです。」

美咲も嬉しそうに話し始めた。

「そうなんだ。アルバイトも頑張ってるんだね。」

「ありがとうございます。でも、さちさんのように、自分の仕事があるというのは素敵だなと思います。」

美咲がさちを見上げながらそう言うと、さちは微笑んだ。

「でも、若いうちに色々なことに挑戦するのも大切だよ。私も学校の時は色々なことをしてきたから、今があるんだよ。」

さちはそう言って、美咲にアドバイスをくれた。
二人はさらにお互いの話をしながら、温泉を楽しんでいた。

美咲とさちは、温泉でゆっくりと過ごした後、さちの部屋行くことにした。
部屋に入ると、さちは美咲にお茶を入れて出してくれた。

「お疲れ様、美咲ちゃん。お茶でもどうぞ」

「ありがとうございます、さちさん。温泉、とても良かったですね」

「そうだね、本当に癒されたわ」

さちは笑いながら言った。
部屋の中は照明が柔らかくて、和の雰囲気が漂っている。

「さちさん、これ、可愛いですね」

美咲はテーブルに置いてあった置物を手に取った。

「ああ、これは温泉街のお土産屋さんで買ったものなんだ。可愛くてつい買っちゃったの」

さちは答えた。
美咲とさちは、そんな雑談をしながら、お茶を飲みながらくつろいでいた。

「さちさん、一人旅ってどうして決めたんですか?」

美咲が聞いた。

「実は、私も初めての一人旅なの。友達と旅行に行く予定があったんだけど、仕事の都合でキャンセルになっちゃって。でも、せっかくだから一人でも行こうと思って来たんだ」

さちは答えた。

「私は何か新しいことに挑戦したいと思って来てみたんです」

美咲が話した。

「そうだったんだね。でも、私たちが出会えたのは、きっと運命なんだと思うよ」

さちは微笑んでいた。
その後も美咲とさちは、同じ年頃ということもあり、趣味や好みの音楽、映画などについて話し込んでいた。
時間が経つにつれ、話題は深いところに入っていき、お互いに心を開くようになっていった。
美咲は、大学での勉強や将来のことについて話し、さちは、美容師として働くことや、夢や目標について話した。

二人は、お互いに共感しあい、深い話をすることで心が通じ合ったようだった。
夜が更けるまで、二人は話し続け、自然な流れで眠りにつくまで話をしていた。

翌朝、二人は早起きして朝風呂に入りに行った。
露天風呂からは、早朝の森の中の景色が見渡せる。
美咲はさちと一緒にいることで、心が晴れやかになっていることを感じていた。

「朝風呂って気持ちいいですね」

と、美咲。

「そうだね。私もいつも旅行に行ったら、朝風呂は欠かせないんだ」

「さちさんはよく旅行に行かれるんですか?」

「うん、旅行が大好きで、休みの日にはよく友達どこかに出かけてるよ。美咲ちゃんも旅行は好き?」

「そうですね。私も旅行が好きかな。いつも友達と一緒だけど。あ、でも、学生だからお金がなかなか貯まらなくて……」

「そうだよね、学生の時はお金がないのが辛いよね。でも、すぐに自分で稼いで旅行に行くことができるよ」

二人は露天風呂でゆっくりと過ごし、朝食を食べにペンションに戻った。

二人がダイニングに入ると、ペンションのオーナーが二人に声をかけてきた。

「おはようございます。朝風呂、気持ちよかったですか?」

「はい、とても気持ちよかったです。ありがとうございます」

美咲が答える。
オーナーの奥様が聞いた。

「朝食は和食でよろしいですか?それともアメリカンブレックファストになさいますか?」

「美咲ちゃんはアメリカンブレックファストの方が好きだって言ってたよね。だから二人とも、アメリカンブレックファストでいいかな。」

さちが答えた。

「はい、アメリカンブレックファストでお願いします。」

オーナー夫妻が朝食の準備をしている間、二人はダイニングのテーブルに座る。

「美咲ちゃんって、普段どんなことをしてるの?」

「学校以外だと、アルバイトが多いかなぁ、でも映画や本を読むのも好きだから、友達と映画を見に行ったりしてますよ。」

「私は、美容師をしているから、ファッションや美容についての情報を追いかけるのが好きなんだ。それと、カフェ巡りも好きだな」

さちが話す。
二人の会話は弾み、時間があっという間に過ぎていく。
しばらくして、オーナー夫妻が朝食を運んできた。

「お待たせしました。アメリカンブレックファストです。どうぞお召し上がりください」

美咲とさちは、オーナー夫妻とも話をしながら、楽しい朝食のひとときを過ごした。

朝食後、美咲とさちはペンションの周辺を散歩することにした。
森の中を歩くと、美しい自然に囲まれて心が癒される。
美咲は自然が大好きで、新緑の中を歩くのは久しぶりだったため、心からリラックスできた。
二人はペンションの周りを散歩しながら、自然の中でのんびりと過ごしていた。

「自分は生まれも育ちも都会で、こんなに自然豊かな場所に一人で来るのは初めてなんです」

「私も元々は都会で暮らしていたんだけど、あるきっかけで田舎に移り住んで美容師を始めたんだ。でも、ここみたいに自然豊かな場所は本当に癒されるよね」

「さちさんって、いいところで働いているんですね。どんなお客さんが多いんですか?」

「うーん、そうだね。地元の人はもちろん、観光客も多いから、様々な人が来るんだ。最近は、リモートワークで田舎に移り住む人が増えているから、そういう人たちも来るよ」

二人は自然の中を散策しながら、楽しい時間を過ごしていた。
美咲とさちは、チェックアウトの時間に合わせて、ペンションを出発した。
オーナー夫妻に見送られながら、美咲は言った。

「本当に素敵な時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました」

オーナー夫妻もにこやかに応える。

「こちらこそ、ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」

ペンションを出て美咲は、さちに駅まで送ってもらうことになった。

「ありがとう、さちさん。本当に楽しかったです。」

「こちらこそ、美咲ちゃんと出会えてよかったよ。また一緒に温泉に行こうね。」

「ぜひ行きたいです!」

さちは車を停めて、美咲を駅のホームまで送ってくれた。

「気をつけて帰ってね。」

「はい、気をつけて帰ります。」

美咲は帰りの電車の中で、温泉旅行での出来事を思い出しながら、さちとの出会いについて考えていた。

ふと思い立ち、スマホでさちにメッセージを送った。

「昨日はありがとうございました!また会いたいです。今度は田舎に移り住んだきっかけっていうのも教えてくださいね。」

しばらくすると、返信が届いた。

「私も会いたい!いつでもいいよ。きっかけは、また今度ね」

美咲は嬉しそうにスマホを見つめ、再会を楽しみにしていた。

熱海で乗り換えたあと、電車の中でぼんやりと景色を眺めていた。
窓の外を流れる風景は美しく、緑豊かな山並みや海岸線を見ていると、温泉旅行での思い出がよみがえってきた。
しばらくして外の景色がだいぶ都会になってきた頃、隣の席に座っていた男性が尋ねてきた。

「すみません、この電車、次は東京駅でしょうか?」

「はい、そうですよ」

「ありがとうございます」

男性は微笑んで、再び窓の外を見つめていた。
しばらくすると、男性は美咲に話しかけた。

「伊豆高原というと、温泉が有名ですよね。行ったことありますか?」

「え?あ、はい、今日帰ってきたところです。とても素晴らしかったですよ」

「それは良かったですね。私も伊豆にはよく行きます。温泉だけでなく、景色も素晴らしいですからね」

美咲と男性は、伊豆や熱海の話題で盛り上がり、その後も楽しく会話を続けた。
そして、電車は静かに東京駅に到着した。

「お話しできて、とても楽しかったです。また、機会がありましたら、お話ししましょう」

男性は声をかけ、別れた。
美咲は、ふと男性の暖かさに心が和んだ。
知らない人との出会いも、思い出に残る旅の一部になるのだなぁ、と実感する。
そして、さちとの再会も楽しみにしながら、電車から降りたのだった。

美咲が自宅に帰った後、しばらくしてさちからメッセージが届いた。

「美咲ちゃん、改めて昨日は楽しかったね!また会いたいな~」

美咲は嬉しくなり、すぐに返信した。

「さちさん、私も楽しかったです!また会いたいです♪」

返信した後、美咲は思わず笑みを浮かべる。
再会を心待ちにする気持ちでいっぱいになってきた。
するとすぐに返信が返ってきた。

「来月、時間があれば、熱海のカフェで会おう♪」

美咲は心からうれしく思い、返信を送った。

「熱海のカフェ、素敵ですね。楽しみにします!」

そして、二人は翌月の熱海での再会を約束した。

美咲は自宅に戻ってきた。
心の中には、初めての一人旅で得た新しい体験や感動が詰まっている。
そして、再会を約束したさちとの待ち遠しい日々が始まったのだ。

「来月の再会を楽しみにしている」

美咲はつぶやいた。

とっても短い旅行。
でも初めての一人旅で経験した美咲は、孤独や不安などの感情もあったけれど、それ以上に得たものがあった。
自分で行動し、新しい世界を見て、出会いを経験することで、自分自身に自信を持つことができたのだ。

美咲は、一人旅の経験を通じて、自分自身を見つめ直すことができた。
そして、再会を約束したさちとの日々を過ごしながら、これからも新しい自分を探求していくことを決めたのだった。