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追憶の廃校

「……うーん、ここはどこだろう?」

彼女は小さく呟きながら目を開けた。
目の前には真っ暗な闇が広がっていた。
何も見えない。
どこにいるのか、自分が誰なのか、何が起こっているのか全く分からない。

彼女は自分の周りを探ったが、何も触れるものがない。
空気の感触も、匂いの感じ方も何もない。
ただただ、暗闇に包まれたまま、孤独に立ち尽くすだけだった。

「誰かいるの?」

彼女は叫んだ。
しかし、返答はなかった。
ただ、彼女の声が壁に反射して、響き渡っていくだけだった。
彼女はしばらくして、呼びかけるのをやめた。
もうダメかもしれない、と思った。

彼女は闇の中で目を開け、何が起こっているか理解できないまま、手探りで回りを探り始めた。
自分が誰なのか、どこにいるのか、そして何が起こっているのかを知るために、必死に考えた。

「ここはどこだろう?」

彼女は再びつぶやいた。
暗闇の中で彼女は自分自身に問いかけた。

「私は誰なの?私は何者なの?」

しかし、彼女の問いかけには答えはない。
彼女は自分が誰であるか、どこにいるのか、何が起こっているのかを理解することができなかった。

「助けて…誰か私を助けて…」

彼女は叫んだ。
しかし、彼女の声は暗闇に飲み込まれ、誰からも聞こえなかった。
彼女はもがき、手探りで部屋の壁を探し、ドアを探した。
しかし、何も見つからない。

「こんなことがなんで起きているんだろう…」

彼女は自分自身に問いかけた。
しかし、彼女の問いかけには答えない。

すると、彼女は突然、周りの空気が変わったことに気づいた。
何かが変わったような気がして、彼女は部屋の中を探し始めた。

彼女は目をこすりながら、深い闇の中で必死に自分がどういう状況にいるのかを思い出そうとした。
しかし、何も思い出せずに焦りが募っていく。

「私は誰なんだろう? 何故こんな場所にいるんだろう?」

と彼女は自分に問いかける。
彼女は暗闇の中で、自分がどうやってそこにたどり着いたのかを思い出そうとしたが、思い出すことができなかった。

彼女は恐怖を感じながら、手探りで周囲を探った。
身体のあちこちが痛く、頭痛がする。
何かに打たれたのかもしれないと考えた。

闇の中で、自分に怪我がないことを確かめるために身体を触ってみた。
身体には異常はなく、彼女は安心した。
しかし、それでも、彼女は自分が何者で、どこにいるのか分からず、ますます不安になっていった。

どうやら、彼女は何らかの理由で意識を失い、目が覚めた時には見知らぬ場所にいたようだ。
彼女は懸命に頭を働かせ、自分がどうやってここに来たのか、そしてどうやってここから脱出するのかを考える必要があると感じていた。

彼女は暗闇に徐々に目が慣れてきたようで、周囲をもう少し見渡すことができるようになった。
目の前には、何もなく真っ暗だったが、やがて部屋の形がぼんやりと見えてきた。
あまり広くない部屋であることはわかったが、どんな部屋なのかはまだわからない。
彼女は再び声を出して周囲に反応があるか確かめた。

「誰かいますか?」

しかし、反応はない。
彼女は不安と恐怖に襲われながらも、自分ができることを考えた。

彼女は恐る恐る、手探りで前に進んでいく。
最初は不安定な足取りだったが、徐々に目が慣れてきたため、より自信を持って歩くことができた。
部屋の端から端まで歩き回り、扉らしきものを見つけた。
しかし、それは施錠されて、開かないことがわかった。

彼女は心の中で悲鳴をあげるほど絶望的な気持ちになった。
何が起こっているのか、なぜこんなところにいるのか、そして一番気になるのは、なぜ彼女は自分のことを覚えていないのかということだ。
一人きりで、ただただ自分の運命を受け入れるしかなかった。

彼女は歩いているうちに、何かが足にぶつかったことに気づいた。
恐る恐る足元を見ると、小さな箱が転がっていた。
不思議そうに箱を手に取り、箱の表面に触れた。
表面は柔らかい触感で、木のような香りが漂っていた。
箱の表面をなぞるように手で撫でると、ひんやりとした感触が手に伝わってきた。
箱の横には、小さな懐中電灯が転がっていた。

彼女は、懐中電灯を手に取り、スイッチを入れてみた。
すると、暗闇に明かりが灯り、彼女の前に広がる真っ暗な部屋が少しだけ明るく照らされた。
最初は光が弱く、あまり周りがよく見えなかったが、少しずつ目が慣れてくると、彼女は周囲を見渡せるようになった。
部屋は非常に狭く、壁も天井もどこかへ消えてしまったかのように見える。
自分がどこにいるのか、どうやってここに来たのかを思い出そうとしたが、何も思い出せなかった。

彼女が懐中電灯で照らした先には、壁には剥がれたペンキが見え、床には傷やひび割れがあった。
部屋の隅には蜘蛛の巣が張り巡らされ、壁にはカビが生えていた。
部屋の中をよく見回すと、古い廃校のような雰囲気を感じた。
この部屋は一体どこなのだろうか、と彼女は不安になった。

彼女は箱を開けることに決め、慎重に蓋を開けた。
中には古びた手紙や写真、そして古い日記が入っていた。

彼女は箱の中から日記帳を取り出し、カバーを開いた。
ページをめくり、書き込まれた文章を読んでみると、それは彼女が書いたものであった。

『私は、あの日何が起きたのか、本当のところよく覚えていない。
 目が覚めたとき、私は真っ暗な部屋の中にいた。
 恐怖で震える中、部屋を探り回ったが、何も見つからなかった。
 その後、気が付いたら私はここにいた。
 どうしてここにいるのか、誰が私をここに連れて来たのか、全くわからない。
 しかし、あの日以来、私は違和感を感じるようになった。
 私は以前とは違う何かに触れてしまったのだと感じるのだ。』

彼女は自分がこの日記を書いたことに驚きを隠せなかった。
彼女は懐中電灯を手に、廃校の中を探索し始めた。

彼女は懐中電灯を手に持ち、部屋を出て廊下を歩き始めました。
廊下は暗く、足元のカーペットも汚れている。

「ここはどこなんだろう……」

彼女は廊下を進みながら、自分がいる場所を探るように周りを見回した。
すると、廊下の奥に階段が見えた。

「そっちに行ってみようかな。」

彼女は足早に階段に向かい、上の階へと辿り着いた。
すると、目の前に扉があった。

「ここは開いてる……」

彼女はドアノブを回し、扉を開けた。
中は図書館のようだ。

彼女は図書館の中を歩いていく。
足音が響く中、どこか不気味な雰囲気が漂っている。
本棚には長い間放置されていたかのように、ホコリをかぶった本が並んでいた。

彼女は本を手に取って中身を見てみたが、古いものばかりだった。
中には装丁も崩れかけているものや、虫に食われた跡があるものもあった。

「何か手掛かりがあるかもしれない」と思い、彼女は図書館の中を探り始めた。
しかし、何も見つからず、ほこりっぽくて臭いがする古い本だけが並んでいる棚ばかりだった。

「こんな古い本たち、何年も誰も読んでいないのかな。でも、もしかしたら……」

と彼女はつぶやきました。
心の中で、何かの手掛かりが書かれた本があるかもしれないと考えた。
しかし、見つからず、彼女はますます不安になっていった。

「もしかして、本当にこの廃校に閉じ込められたのかもしれない。」

彼女は図書館の奥に進んでいくと、古びた机を見つけた。
それは大きな本や紙の束が積み重なっており、何かが書かれているようだった。
机の周りを見回し、緊張感を抱えながら近づいていった。

引き出しを開けると、中には古びた紙束が入っていた。
紙束には、日付の書かれた手紙や、古びた地図が入っていた。

彼女はその中から手紙を取り出し、読み始めた。

『 美香ちゃんへ
  もし手紙を読んでくれているなら、あなたは私が亡くなった後にこの手紙を見つけたでしょうね。
  私は何かが起こる前に、この手紙を書くことを決めました。
  私は、最後の時をこの図書館で過ごしています。
これまでの人生で、私は誰からも理解されず、孤独を感じ続けてきました。
  ここでは、私の思考を整理し、自分自身を見つめ直すことができました。
  しかし、最後には間に合いません。。
  私は病気にかかっており、もう長くは生きられないのです。
  私はあなたが私の代わりに、自分自身を見つけてくれることを望んでいます。
  あなたに出会えて、私は幸せでした。
  あなたに幸せが訪れますように。
さやかより

  もし、誰かがこの手紙を発見した時は、私の最後の願いを聞いてください。
  この手紙を、美香ちゃんに届けてください。
  そして、あなたにもう一つお願いがある。
  私が図書館の地下に隠したものがあります。
  私が生前に何度も読んでいた本です。
その本も、美香ちゃんに届けてください。』

この手紙は誰のものなのか?
美香という人は誰なのか?
地下室の本?
彼女は頭の中で考えながら、手紙を何度も読み返した。

手紙の中でさやかという人が、自分が病気であること、そして自分がこの図書館にいたことを打ち明けていた。
彼女は、この手紙を読んでいる時点でさやかが亡くなっていることを悲しく感じた。
しかし手紙の宛名が「美香ちゃん」としか書かれていなかったため、誰に届けるべきか分からずに困っていた。

彼女は図書館を見回したが、年季が入っており、壁紙は剥がれ落ち、窓ガラスにはひびが入っていた。
当然のように誰もいない。
本棚の間を探したが、美香という名前が書かれた本は見つからなかった。
彼女は困惑しながらも、何か手がかりを見つける方法を探した。
しかし、廃墟のようになっている図書館には、人の姿はなく、探し方も分からなかった。

彼女は自分が持っている手紙を再度見直し、何かヒントになるような情報が書かれていないかを探した。
しかし、手紙には美香という名前と、図書館の地下に隠したものがあるという情報以外はなかった。

彼女は図書館を一回りしても何も見つからなかったので、廊下へと出た。
廊下には静寂が漂っており、不気味な雰囲気を醸し出している。
彼女は少し戸惑いながらも、地下へと降りる階段を見つけた。

図書館の地下に降りようとしていた。
階段は朽ちかけていて、足場が不安定だ。
しかし、彼女はさやかの手紙に導かれていた。
地下に何かが隠されているはずだ。

彼女は慎重に階段を降りていった。
足を踏みしめる音が、静かな廊下に響いた。
そして、階段を降りきったところで、突然階段が崩れた。

彼女は一瞬驚いたが、すぐに慎重に身体を動かし、崩れた階段から避けるようにして身を守った。
廃墟と化した図書館の地下にたどり着いた。

周りには本棚があり、壊れた机や椅子が散乱していた。
彼女はさやかの手紙に書かれた言葉を思い出していた。
本が隠されているはずだと。

図書館の地下を探し始めた。
しかし、何も見つからなかった。
彼女は床に転がっている石にぶつかり、痛みで声をあげた。
その音が響いた瞬間、何かが音をたてて倒れた。
それは、壁にある本棚だった。
本棚の奥には、黒い布で覆われた物が見えた。
彼女は、その布をめくると、古びた本が一冊出てきた

本に挟まれた栞に「さやか」という名前が書いてあった。
これが、さやかが隠した本なのか?
本を開いてみると、何ページかに渡って赤いマーカーで印がつけられている箇所があった。
何か意味があるのだろうか。
さらに本の裏には、何か書かれた紙片が挟まっていた。読んでみると、次のように書かれていた。

『あなたがこの手紙を読んでいる頃には、私はもうこの世にはいないかもしれません。
 でも、私はあなたに手紙を書いたんです。
 あなたが私の本を見つけた時には、あなたが私が求めていた人だと思いました。
 あなたが私の本を見つけた時、私はもう病気で苦しんでいました。
 私が望んでいたのは、この本が誰かの役に立つことでした。
 でも、私は誰にも相談することができませんでした。
 だから、この手紙を書くことにしました。あなたには私の願いを叶えてほしいんです。
 私の本の中に、私の思いが詰まっています。
 あなたが私の本を読んで、何かを感じてくれたら、それだけで私は幸せです。』

手紙を読んだ後、私は考え込んでしまった。
この手紙を書いた「さやか」とは誰なのだろう。
そして、この本が誰に役立つことができるのだろうか。

彼女は、栞が挟まった本を手にしていた。
その本には「さやか」という名前が書かれており、彼女はその名前に何かを感じた。

しかし、同時に彼女はこの廃校がどこにあるのか、何故廃校になったのか、そして何故自分がここにいるのかも気になっていた。
周囲を見渡しても、誰の気配もない。

廃墟のような図書館を見渡す。
この図書館がある廃校となったこの校舎自体も荒れ果てている。

壁が剥がれ、床は傷んでいる。
彼女は、足元にある破片を踏みながら図書館を出て階段を登っていった。

歩きながら彼女は自分がどうしてここにいるのかを思い出そうとしていた。
しかし、何故か自分の記憶は曖昧で、その理由を思い出すことができなかった。
彼女は自分が誰なのか、何故ここにいるのか、そしてなぜさやかが手紙を書いたのかを知りたくなった。

彼女は手にした本を大切に抱えながら、再び階段を登り始めた。
心臓はどんどん高鳴り、足もすくみそうになる。
しかし、美香という名前が彼女の頭を駆け巡り、彼女は自分がこの本を届けるためにここにいるという確信を強めた。

階段を上がりながら、彼女はさらに周囲を観察し始めた。
周りには本や机、椅子など、学校らしいものが散らばっていた。
しかし、壁は崩れ落ち、天井からは巨大なクモの巣が垂れ下がっていた。

彼女は手にした本を大切に抱え、校庭へと出た。
そこには草木が乱れ、校舎も朽ち果てていた。
廃校になった理由を知りたくなり、彼女は周囲を見渡した。
校舎には何も書かれた看板もなく、原因は不明だった。

彼女は何も見つからず、落胆しながら校庭を歩いていた。

彼女は荒れ果てた校庭に足を踏み入れた。
目の前には、生い茂る草と木々が無秩序に生えている光景が広がっていた。
空気は静かで、何も聞こえない。彼女は静かに呟いた。

「こんなに荒れていると、もう何年も人がここに来ていないのかな・・・」

草むらを歩きながら、彼女は周りを見回し、何か手掛かりを見つけようと必死だった。

彼女は校庭を歩き回った。
空気は静かで、草は生い茂り、木々は葉を落としている。
彼女は、この校庭に子どもたちが元気に遊んでいた姿を想像しながら、懐かしい気持ちになった。
しかし、廃墟と化した校舎が目の前にあることを思い出し、気持ちは重くなっていく。

彼女は静かに校庭を歩き回り、やがて校舎の周りに出た。

「こんなに荒れ果てた廃校になるほどの理由があったのかしら・・・」

彼女はそうつぶやきながら、校舎の壁をなぞるように歩いていく。
建物の隅々まで探し回り、何か手がかりを見つけようとした。
しかし、壁には何も書かれていないし、窓からは薄暗い光しか差し込んでいない。

彼女は校舎の周りを歩き回ったが、何も手がかりになるものは見つからなかった。
校舎はひどく荒れ果てていて、窓ガラスは割れていたし、壁も崩れ落ちているところがあった。

彼女は静かな校庭を見渡し、何かが違うことを感じた。
あまりにも静かすぎる。
鳥のさえずりも聞こえない。
心地よくない気配が漂っていた。

美香は、校庭の端に目を向けると、樹木が生い茂っているところに小さい建物を見つけた。

「あの建物、気になるな…」

と彼女は自分自身につぶやいた。

荒れ果てた校庭の中で、その建物だけが何となく異質な存在感を放っていた。
彼女は、そこに何か手掛かりがあるのではないかと思い、そっと近づいていった。

小さい建物の周囲は、荒れ果てた草むらと雑木林に覆われている。
何年も手入れがされていないようで、草や木々が自由に伸び放題になっていた。
建物の周りには、昔は遊具があったのかもしれないフェンスや鉄柱が立ち並んでいたが、今は錆びついて朽ち果てている。
建物自体も、古びた木造建築で、外壁は汚れがついて色あせていた。
周囲の風景とは対照的に、建物の窓からは明かりが漏れており、中に人がいるようだった。

彼女は建物のドアに近づいて、ノックしてみた。
すると、何者かがドアの向こうから軽く応えたような気がしたが、すぐに静かになった。
再度ノックしてみると、また同じような反応があった。

「こんにちは、誰かいらっしゃいますか?」

彼女は小さな建物に向かって声をかけた。
しかし、何の反応もなかった。建物の中は静まりかえっているようだった。

建物に入ると、小さな部屋があった。
中には机と椅子があり、机の上にはノートと鉛筆が置かれていた。
また、壁にはポスターやチラシが貼ってあった。

彼女は、机の上に置かれたノートを手に取り、中身を確認した。
中には、古びた手書きのメモや日記がたくさん書かれていた。

「これは誰かの手記だろうか…」

と彼女は思った。
一つ一つページをめくっていくうちに、その手記がこの廃校にまつわるものであることが分かってきた。
そして、その手記が書かれた人物が、この廃校に深い関わりを持っていたことが伝わってきた。

彼女は手記を読み進めた。

『廃校に至る経緯は、校舎の老朽化と、近隣の学校との統合によるものである。しかしその真相は……』

これは廃校直前までここに住んでいた、かつての校長先生が書いたもののようだ。
手記には、廃校にまつわる秘密が記されていた。

『学校周辺で起きた未解決の事件が、廃校に関わっている。
 事件は、現在でも警察によって捜査が続けられている。
 しかし、当時の私たち教師たちは、生徒たちに事件を知られることを恐れ、隠蔽することを決めた。
 そして、廃校の決定も、この事件をきっかけにしたものだった。』

彼女は、手記の内容に驚愕した。
廃校にまつわる秘密と未解決の事件。
これらが何かしらつながっているのだろうか。

さらに手記を読んだ彼女は、廃校には一人の女性教師がいたことを知った。
手記によれば、学校が閉鎖された後も彼女は一人で学校に残っていたという。
何故彼女が残ったのか、そして何が起こったのか。
彼女は手記に書かれた秘密を解き明かすべく、この廃校の謎に挑む決意を固めた。

彼女は手記に書かれた女性教師のことを思いながら、建物を見回した。
手記によると、この女性教師は廃校になる前から学校に残っていて、廃校になった後も一人で学校に留まっていたという。
その理由は手記には書かれていなかったが、彼女は何か大切なものを学校に隠しているのではないかと考えた。

彼女は手記に書かれていた場所を探し回ったが、何も見つけることができなかった。
しかし、その時、部屋の奥にある戸棚の上に小さな箱を見つけた。
箱の中には、古い手紙が入っていた。

手紙には、女性教師が学校に残った理由が書かれていた。
それによると、この女性教師は学校で生徒たちに大切なことを教えていたが、ある日突然、病気で倒れてしまった。
それでも彼女は生徒たちに教えることを諦めず、学校に残って授業をしていた。
しかし、病気が悪化してしまい、生徒たちを見守ることしかできなくなった。
そして、学校が閉鎖される直前に、彼女は自分が教えたことを記した手記を書いて、学校に残していたのだった。
その後、女性教師は学校が閉鎖された後も、彼女は一人で学校に残り、ある日突然姿を消してしまったという。

手記にはその後の消息は書かれていなかった。
しかし図書館で見つけた手紙から、その女性教師がさやかではないだろうか?

さやかは病気になり、一人で学校に残り、最期は誰にも看取られずに亡くなったのかもしれない。
手記の中でそのような記述があるわけではないが、彼女が書いた手紙からは、そのようなことが想像された。

彼女は手記で読んだ美香のことや廃校にまつわる事件が頭をよぎり、改めて校舎の方に戻ることにした。
校舎に到着すると、その周りは依然として静まり返っていました。
彼女は、校舎の中に入ろうとしたが、さっき出たばかりのドアがどういうわけか施錠されていた。
そこで彼女は、校舎の周りを歩き回って、入り口の窓から中を覗いてみることにした。

中は、さきほど変わらず廃墟のようだ。
校舎の中には、ぼろぼろになった机や椅子、黒板などが散乱している。
その中で、ひときわ新しい机や椅子が置かれている場所があった。
それは、図書館にあったものと同じデザインのものだった。

彼女は、その場所に近づいて机を見てみると、そこには何枚かの紙が散らばっていました。
そのうちの一枚には、『美香はここにいる』という文字が書かれていた。
彼女は、不思議な気持ちになりながらも、その紙を手に取りました。
すると、突然背後から何かに押し倒され、意識を失ってしまった。

彼女が目を覚ますと、最初にいた教室に戻っていた。
周りを見渡すと、廃墟となった校舎の様子が目に入った。
彼女は思わず、美香のことや廃校にまつわる事件が頭に浮かんだ。

彼女は慎重に教室を出て、廊下を歩き始めた。
静かな廊下に足音が響き、彼女は不安を感じながら進んだ。
廊下の窓からは光が差し込み、埃っぽい空気を照らしていた。

しばらく歩いていると、廊下の先に廊下が続いている部屋があった。
ドアの向こうには何かがあるかもしれないと思い、彼女はドアノブに手を伸ばした。
しかし、ドアは開かなかった。
彼女は力を入れてドアを開けようとしたが、なかなか動かなかった。
そのとき、ドアの向こうから何かが聞こえた。

「誰かいるのか?」

彼女は声に驚き、一瞬ドアを離した。
しかし、何も起きなかったため、再びドアノブに手を伸ばした。
すると、今度はドアが少しだけ開いた。

彼女は慎重にドアを開けて中を覗き込むと、そこには誰もいなかった。
ただ、机と椅子がひっくり返されているのが見えた。
不気味な感覚に襲われ、ドアを閉めて進むことにした。

廊下に出ると、校舎内はまるで時間が止まったかのように静かだった。
彼女は不安を感じながらも、次の教室に向かった。

次の教室に入ると、机や椅子、黒板などが残されていた。
教室の奥には、備品室と思われる扉があった。
彼女は扉を開けてみたが、中には何もなかった。

彼女はさらに別の教室を調べることに決め、廊下を進んでいった。
しかし、次々と入る教室は全て同じような状態で、何も見つからなかった。

「こんなに静かで、何もないと不気味だな…」

彼女は心細さを感じながらも、次の教室に向かった。
彼女は目の前にある扉を開け、教室に足を踏み入れた。
すると、そこには窓が割れ、地面に散らばったガラスの破片が転がっていた。

「何かあったのかな…」

と彼女は思いながら、足元に気を付けながら教室の中を探索した。
この教室でも机や椅子が散らばっていた。
机の上には何冊かの本が放置され、そのうちの1つには『美術室の鍵』という文字が書かれていた。

「美術室?」

彼女は不思議に思いながら、その本を手に取った。
その時、彼女は後ろから何かの音がするのを感じた。
彼女は素早く振り返ると、廊下に立っている人影を目撃した。

「誰?」

と彼女は尋ねるが、相手は何も答えずに去っていった。
彼女は怖さを感じながらも、その廊下を進んでいくことにした。

彼女は不安そうに廊下に目を向ける。
すると、壁際にぽつんと立っていた影が目に入った。

彼女は自分が倒された時のことを思い出し、その影が犯人ではないかと不安に思った。
しかし、影はそのままじっと立ち尽くしていて、彼女を見ても反応しない。

彼女は不安ながらも、勇気を出して声をかけた。

「あの、大丈夫ですか?」

しかし、影はまったく動じることなく、ただじっと壁に寄りかかっているだけだった。
彼女は、怯えながらも人影の顔を覗き込んでみた。
しかし、その人影の顔は何も映らず、ただ暗闇の中に浮かんでいるようだった。

彼女は恐怖に襲われ、足がすくんでしまった。
その時、何かが彼女の背後で動き出したような感覚があり、彼女は慌てて振り向いた。

眩い光がひかり、廊下に立っていた人影に振り向いた瞬間、突然うっすらとした記憶が蘇ってきた。
その中に、彼女がこの学校の生徒だったこと、そして彼女の担任だったさやか先生が、ある日突然行方不明になってしまったことがあった。
思い出すにつれ、彼女の心には不安や恐怖が込み上げてきた。

彼女は思わず顔を覗き込んでしまった人影の顔を思い出し、目を細めた。
その瞬間、彼女の目に映ったのは、若かりし頃のさやか先生の姿だった。
彼女は目を疑ったが、次第にその姿がはっきりと見えるようになってきた。

思わず声を上げて、彼女は先生の名前を呼んだ。

「さやか先生!」

彼女は驚きを隠せなかった。
そして、さやか先生がいなくなってからもう何年もたっているというのに、ここに自分がいたことに気づいた。
しかし、この状況に彼女は戸惑ってしまった。
彼女は、廊下の壁にもたれかかりながら呼吸を整えようとした。
すると、突然目の前に浮かび上がるように、さやか先生が授業をしていた懐かしい教室の光景が蘇ってきた。

「そうだ、私はさやか先生の生徒だったんだ!」

と彼女は思い出した。
しかし、自分の名前や過去の出来事についてはまだ思い出せなかった。
彼女は少し落ち着いてから、もう一度教室に戻ってみようと決意した。

彼女は教室に戻り、壁にかけられた時代を感じさせる黒板や古びた机を見つめながら、当時のことを思い出した。

さやか先生はいつも温かくて、生徒たちから慕われていた。
彼女自身もその中の一人であり、さやか先生との授業や会話が楽しみでならなかった。
でも、どうして自分の名前が思い出せないのだろうか。

彼女はさやか先生が書いた手紙を取り出し、再び読み返していた。
手紙には、廃校に至るまでの出来事や、さやか先生が当時の校長とのやり取りで悩んでいたことが書かれていた。
それらを読んでいるうちに、彼女の頭の中には当時の風景や雰囲気が鮮明に蘇ってきた。

すると、急に彼女の頭にある何かがクリアになったかのように、彼女は自分が石井美香という名前であることを思い出した。
彼女は感動と同時に、自分がどうしてここにいるのか、なぜ自分が記憶を失くしていたのかを思い出そうと試みた。

彼女は自分が美香であることを思い出し、手紙が自分宛である可能性が高いことに気づいた。
考え込んでいると、当時の記憶が次々に蘇ってきた。
彼女は、さやかは自分が大好きな教師であり、学校が閉鎖されることになった時は悲しんでいたことを思い出した。

彼女は、図書館の地下で見つけた本を手に取った。
ふと、その本がさやかから自分に贈られたものであることに気づいた。
改めて本を開き挟まれていた紙辺を見ると、裏側にはさやかから美香への手紙が書かれていた。

『美香ちゃんへ、この手紙を読んでいるときには、もう私はこの世にいないかもしれません。
でも、きっと私たちはいつか再会することができると信じています。』

美香は、手紙を読みながら、当時のことを思い出した。
さやかは、美香が小学校に通っていた頃の担任教師だった。
優しくて、いつも美香を励ましてくれたさやかのことが、美香にとって特別な存在だった。

手紙には、廃校についての記述もあった。
美香は、廃校になる前に最後に会ったとき、さやかは自分に何かを託したような気がした。
そして、図書館の地下にあるこの本が、その託されたものだと思った。

彼女は手紙を読むうちに、涙がこぼれ落ちていた。
さやかは、自分が亡くなった後も、美香と繋がっていたいと思っていたのだ。

彼女は考え込んだ。
そういえば、廃校にいた理由はわからなかった。

そんな中、彼女は廃校の一室にあったテレビに目が留まった。
すでに電気も通っていないはずのテレビは、この地域で起こった未解決の事件について報じていた。
それは、数年前に発生した一家殺害事件だった。
一家殺害事件が発生し、そのうち当時小学生だった女の子が一人行方不明のまま、未だに発見されていないと報じられた。
その映像を見た瞬間、彼女は過去に何があったのかを思い出した。

犠牲者家族とは、彼女の家族だった。
そして、発見されなかった女の子とは、まさに彼女のことであった。

事件から十数年たち、未だに未解決であった、この事件について
彼女は独自に調査を行っていたのだ。

そして、かつて通っていたこの学校に関わりがあることを突き止め、その調査のために、廃校訪れたのだった。

さやかの手記には、廃校のきっかけになったのは、この事件であり
事件そのものに、学校の経営者らが関与していると書かれていた。
その事件の真相を解明するために、廃校後も学校に一人残っていたのだ。

記憶を取り戻した彼女は、廊下へ出た。
すると、廃校の一室から、かすかな音が聞こえてきた。

「あれは…?」

と、彼女はその部屋に向かって走り出した。
ここは美術室のようだ。

部屋に入ると、そこにはさやかの机が置かれていた。
そして、その机の上には、何かが置かれているのが見えた。

「これは…?」

と、彼女は机の上に置かれたものを手に取った。それは、さやかが書いた手紙だった。

「これは、私に宛てた手紙…?」

と、彼女は興奮した。
その手紙には、何か重要な情報が書かれているのではないかと、彼女は期待を込めて手紙を読み始めた。

彼女は、さやかが書いた手紙を読んでいた。
手紙には、さやかが自分の心境を綴っている。
その中には、彼女に向けた言葉もあった。

『美香ちゃんへ。私はもうすぐこの学校を去ります。
あなたには本当にお世話になりました。
あなたがこの学校を卒業する頃には、私はもう遠くにいるかもしれません。
でも、いつか必ずあなたに会いに行くから、待っていてね』

彼女は、涙が止まらなくなった。
自分がさやかの教え子だったこと、そして、自分がこの手紙の宛先だったことが、今更ながらに理解できた。
手紙の中には事件についてのことは書かれていなかったが、廃校に関することが書かれていた。

『この学校が閉校になることになってしまいました。
 私たちの思い出が詰まったこの場所が、もう誰もいない、
 寂しい場所になってしまうのは、とても悲しいことです。
 でも、それでも私たちの思い出は残る。
 そして、きっといつかまた、ここで会える日が来るはずです』

彼女は、さやかの手紙の中で、ここに来た謎が解けた気がした。
さやかに特別懐いていた美香。
そして事件の被害者であり、事件を解明しようとしていた美香に手助けをしてくれたのではないだろうか。

そこで、美香は図書館の地下で見つけた本を手に取った。

さやかが残した手紙を読み、その内容に深く心を揺さぶられた。
彼女は、何度も手紙を読み返し、さやかが託した言葉に耳を傾けた。

手紙の中には、さやかが美香に伝えたいことが書かれていた。
それは、美香が自分の信じる道を進むこと、そして、自分を信じることだった。
さやかは、美香が強い意志を持ち、自分の道を歩んでいくことを望んでいたのだ。

また、本を託した理由についても、彼女は考えた。
さやかは、本を通じて美香に何かを伝えたかったのだろう。
そして、その伝えたかったことが、彼女が自分の信じる道を進むために必要なことだったのかもしれない。

彼女は、自分自身に問いかけた。
自分は本当に自分の信じる道を進んでいるのだろうか。そして、自分が本当に自分自身を信じているのかも疑問に感じていた。

彼女は、さやかが残した手紙と本から得たメッセージを胸に、自分自身を信じ、自分の道を進むことを決意した。
最後にさやかの教室に戻り、さやかに向かって深くお辞儀をした。

「さやか先生、ありがとうございました。
 あなたの手紙と本を見つけることができて、私は自分の過去と向き合うことができました。
 私は、あなたからたくさんのことを学びました。
 私も、あなたと同じように、誰かを助けるために、自分ができることをしていきたいと思います」

彼女は、手を合わせたまま数分間静かに祈りを捧げた後、さやかの教室を後にした。

彼女は、静かに廃校の敷地を後にし、外に出ると自分のスマートフォンを手に取った。
電波が届くところに移動して、警察に事件の証拠品として手紙と本を提供した。

そして、自分が美香であること、家族の殺害事件に関する情報を提供した。

警察に協力した彼女は、長い取り調べや証言の後、事件の真相が明らかになるまで何度も呼び出されることになった。
しかし、それでも彼女は、廃校でみつけたさやかが託した手紙と本が、自分の人生に大きな変化をもたらしたことを思い出した。

さやかから受け取ったものが、自分の人生にとっての大切な手がかりになったことに感謝し、さやかの想いを大切にすることを決めて、歩いていった。